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Roll'em!

アイドルを愛でたり映画を観たり自転車に乗ったりします

小説『火花』

 移動中にちょうどいい薄さ(物理)の本だなと思い手に取りました。あまり期待していなかったこともあるかもしれませんが、予想外にかなり良かったです。

 

そりゃあただ単に芸能人が小説書いたってだけで芥川賞取れないもんね…

 

あらすじ

売れない芸人の徳永は、熱海の花火大会の営業で先輩芸人の神谷と出会う。

 

破天荒でそれでいて自分の哲学を貫く神谷に強く惹かれた徳永は、弟子入りを懇願。神谷は「俺の伝記を作って欲しいねん」という申し出とともにそれを受け入れる。

 

神谷と徳永はそれぞれ別の相方とともに漫才を磨き、頻繁に会ってお酒を飲みながらお互いの「笑い」についての信念を語り合う。徳永は会えば会うほどに神谷への憧れと尊敬を強めていった。

 

次第に徳永のコンビは売れ始めるも、神谷のコンビはいつまでも売れない芸人のまま。そんな中、神谷は多額の借金を抱え姿を消してしまう…

 

 

 お話の内容はこんな感じです。

 

 まず、文章がめちゃくちゃ読みやすい。如何にも文学好きみたいなこねくり回した文章じゃない。一文一文が簡潔だけれど過不足がなくて、しっかり伝わってきて想像できる。これはもう素直にびっくりしました。先入観で今まで読んでなかったの激しく後悔しました。ごめんなさい。

 

 内容について。徳永と神谷は頻繁にお酒を飲みながら「笑い」について話合います。話し合うといっても、徳永はかなり神谷に心酔しているので神谷の哲学を吸収する、みたいな感じですが。そして冗談のような約束ですが、頼まれた伝記を作るために徳永は神谷のエピソードを律儀にノートに綴ります。

 

恋愛とはまた違う、なにか特殊な憧れと神聖視がそこにはありました。正直腐女子なので堪らなかったです。

 

 というか、こういう構造の作品がめちゃくちゃ好みだということに気づかされました。

 

主人公と、主人公が神聖視、特別視している同性の人間が出てくるやつ。

 

夏目漱石の「こころ」しかり加藤シゲアキの「ピンクとグレー」しかり。それぞれの展開とか特色は違うけど、基本的な人物の関係設定として。

 

 憧れていて神聖視していて、もはや偶像化しているからこそ、対象が自らそれに背いた時にものすごく残念に思えてしまう

 

そういう葛藤が描かれた作品がものすごく好きです。もはやそれは自分のイメージの中に築き上げられた相手を見ているだけで、相手をきちんと見ていないんでしょうけど、ある意味めちゃくちゃ純粋な好意だなと思います。

 

自分がやられたら複雑だけど。自分が女だからこそ、男性同士の尊敬、憧れといった精神的で特殊な上下関係がなにかものすごく純粋かつ美しいものに見えるのかもしれません。だって、そこに自分は関与できないから確かめようがないので、いつまでもその関係性はファンタジーじゃないですか。なにか自分が知らないような美しい人間関係がそこにはあると思いたいだけなのかもしれません。男の人はこの小説を読んだ時に、この訳わからないけど強い絆をどう思うんですかね。気になります。

 

 少し気持ち悪い視点からの感想になりました。

 

 神谷のには作者の考えが、そして、徳永には作者の自意識みたいなのが投影されてるのかなーと思いました。割と2人が作中でしている会話に共感する部分が多かったので個人的にはそこも良かったです。最近全然お笑い分からなくて、ピースのやってるネタもちゃんと見たことない気がするので見てみたくなりました。

 

 そうそう、奇しくも3月11日は2年前にこの小説が刊行された日です。

 

 Netflixでドラマ版が配信されていて、今年には映画も公開されるとのことなのでそっちもチェックしたいです。