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天気の子についての余談

この記事に関する余談です。まだ天気の子の話するんかい。

目次

 

この作品を「無責任」と捉えることについて

 さて、ここからは全部超絶余談だ。

 ヒロインに対する恋と愛で主人公は結果的に東京を水没させる。しかし、もちろん責められるべきは東京を水没させたことではない。あくまでこの作品の主題は、「全体主義からの脱却と個の尊重へのパラダイムシフト」だ。恋と愛を貫くために、確かに主人公は手段の選択を誤って刑法に抵触している。しかしその部分はしっかりと責められて、償われている。

 主人公が実家に戻り、保護観察処分という判決が下るまで、そして処分期間中どう暮らしていたのかは描かれていないため、分からない。けれど、確かに責められるべき点は責められ、償われているのだ。批判的なレビューには、この点が無責任だとかなんだとか書かれているが、私は全くそうだとは思わない。

 あくまでこの作品の主題は、「全体主義からの脱却と個の尊重へのパラダイムシフト」なのだ。個の尊重を優先したことは責められるべきではない。また、この作品に対して、社会への責任を求める姿勢こそ、皮肉にもこの作品が否定する全体主義そのものの考えだと思う。

 

純粋な恋や愛とはなにか?

 アニメファン層以外もターゲットに据えているからというのもあろうが、主人公の行動の根本が性欲由来っぽくないのもポイントの一つだと思う。(新海監督がフェミ界隈に公開当初ずいぶん叩かれていたのは承知の上で)

 この映画は、ヒロインに対するラッキースケベもなければ、キスシーンもない。動物的な欲を直接描写せず、あくまでプラトニックな書き方をしていると思う。

 相手が存在しているだけでいいというような、純粋な恋心とか愛の存在は、人間が動物である以上、限りなくフィクションに近く、信仰や祈りにも近い。対象が異性ならなおさら。本田翼が演じるキャラクターにラッキースケベシーンがあり、ヒロインの陽菜にはないのも、この純粋な恋心に対する信仰の表れなのかなと思う。(まぁこういう女性キャラの扱いの差とかは批判されるポイントではある)

 

 異性に対する純粋な恋心や愛の存在を信じたい。そして、その純粋な恋心や愛が持つ、超常的な力を信じたい。それらの気持ちによる行動には価値があり、神聖であるという信仰。

 この信仰は自分がドルヲタとして持っている感覚にも通じる様な気がする。(接触したいとか、相手とのつながりを望むとか、そういうのがない。非ヲタの上司に「やっぱケンティーとキスしたいとか思うの?」と聞かれると、セクハラ以前に、ガチでそういうスタンスではないので困る)私はもしかしたら、性欲由来でない純粋な恋や愛というものを信じたくてヲタクしているのかもしれない。

 

ドルヲタは帆高にはなれない

 陽菜は晴れ女の仕事そのものにはやりがいを感じていたし、運命を受け入れる覚悟をある程度持っていた。しかし、主人公はただただ、陽菜の存在の存続を望んで、そのやりがい(≒社会に対する承認欲求)を捨てさせることや、覚悟を反故にして地上に戻ってくることを選ばせる。愛にできることとして、消耗と消費から陽菜を守る。これには、アイドルのヲタクやっている身として複雑な気持ちにさせられる。

 私の好きな人は大勢からの賞賛を得ることで身を立てている。本人もそのために、想像もつかないような努力をしている。  

 しかし、有名税という大義名分のもとで、よく知りもしない人から心無い言葉を浴びせられたり、プライベートでの行動にまで難癖をつけられたり、熱心なファンだった人がアンチになったり、ストーカーとして逮捕されるファンがいたり、ファン同士の争いがあったりと、悲しいかな、完全に環境がクリーンになることは無い。見ていて正直、こんなにつらい思いをしている(と推測される)ならもう辞めちゃってもいいよって、思ってしまうことがある。でも、ヲタクは、帆高ではない。

 競争社会の中で揉まれまくる好きな人を、祈るような気持ちで見守ることしか、根本的にはできない。セカイ系アニメから、「戦えば世界が救われる」という要素を取り除いたようなものかも知れない。天気の子は、あくまで一般的な個人間の恋愛の話だが、アイドルとファンの間にある愛はまた違う。大勢とシェアされている恋の対象、多くのファンと一人のアイドル。構造からの脱却は実質不可能だ。

 帆高とは違う形で、愛に意味づけをする必要があるだろう。この中で、自分がどうあるべきかという、ヲタクとしての究極理想スタイルはまだまた追求の余地がある。大丈夫には程遠い、そう思う。

 

超絶どうでもいい話

IN THE STORMの「荒れた時代でも高く帆を張れ 勇気という名の船を出そう」って歌詞が大大大好きだから帆高って超いい名前じゃん!と思う。マジ息子の名前の候補だわ(結婚・出産の予定、ナシ)