与太話

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2020年に足りなかった心の栄養を埋める舞台、両国花錦闘士を観た話

両国花錦闘士を観ました!


結論

  • Twitterなどで評判を目にして気になっている!→今日のあなたのラッキーアイテムは両国花錦闘士のチケット!事情が許すのであれば今すぐチケットを押さえましょう!

 

超〜良かった。Twitterでレポ見て「これ多分自分の好きなやつだ」という直感のままチケットの取り方調べてチケット確保した自分を褒めたい。観終わってすぐ、明治座の前でクレカ出して次に行ける公演のチケットを買ってしまった。(危ないよ)それくらい良かったのだ。

 


2020年、楽しみにしてたことの8割はどこかに吹き飛んで行ったのに、仕事は無くならない。生活は無くならない。生活から遠いところの世界に、輝きに触れるために働いているのに。配信ライブはあれど、数少ないリアル現場もあれど、何かが足りない。欲しいものは全部足りないのに、欲しくないものは全部過多。


そんな2020年の締めくくりに全ての厄を払い、エンターテイメントを好きだという気持ちを包み込み、不足していた心の栄養を全て補ってくれる強烈な舞台があるのだ。

…観たくない????観て欲しい。


諸般の事情で急遽主役に原嘉孝が抜擢されたことは知っていた。こりゃすごい仕事が来た、頑張れ…上手くいきますように…1人のジャニヲタとして陰ながら応援していた。


彼のことは主にKAT-TUN関連のバックで見ていて、元気で、筋肉がすごくて、面白島テレビクリエイターで、舞台関連のヲタクから漏れ聞こえてくる評判が良い、しかし中々に難しい状況に置かれているという印象だった。


8月8日のドームで喜ぶ側だった自分が彼に対して軽々しく「頑張ってほしい」とか「おめでとう」とか「大きなチャンスだ」とか言うのは憚られて、代役でこの舞台の主演を務める事になったと知った時も特に言及はしなかった。


ただ、それが些か不謹慎だとは感じつつも、これまでの彼について知っていることを思い返しながら(このバカデカチャンスを掴み取り筋肉のシンデレラボーイになっていくであろう原嘉孝、アツいぜ…)と思っていた。私は体のデカい男でテンションが上がるヲタクなので、原嘉孝の筋肉はこっそり観察してきているのだ。演目そのものも面白そうである。いいな、面白い舞台。と言いつつ、私はこの時点ではチケットを取るつもりは無かった。

 

しかし、運命の日はやってくる。TLに、キレのいい感想が次々と流れてくる。その時の興奮具合と言ったら、桃太郎の婆ちゃんか私かと言ったところだ。


もう、決定的に気になるワードがあった。


「近年演劇の神に愛され続けている男」

 

私は舞台が好きで、そこに上がれる人に対して人一倍憧れがある。そんな私に取ってこれ以上に魅力的な感想はなかった。


観てやるよ、演劇の神に愛されてる男って奴を…

 

秒速でチケットを購入した。ひとまず様子見のA席。

 

Twitter上で日に日に加熱していく感想を見ながら、会社で嫌なことがあっても(ここを乗り切れば両国花錦闘士…)と心の中で唱え、どうにか迎えた観劇日。このプロセス全てが"現場"で、ものすごくワクワクしていた。

 


劇場で座席に座り、ドキドキしながら開演を待つ。ついに幕が上がったその時、完全に飲まれてしまった。

 

音、光、熱、色、舞台の上にあったもの全てが私が欲しくて欲しくて堪らなかったものだ。

 

デーモン閣下の歌がうますぎる。照明がいい。演者の熱気。驚くほどの肌色。これが相撲のミュージカルか…楽しい。楽しいぞ!すごい楽しい!いきなり心の栄養が全補給されてびっくりして泣いてしまった。人は本当に欲しかったものを目の前に差し出されると泣くらしい。

 


デブが嫌いで自分も力士とバレたくない、原嘉孝演じる昇龍はなんだかちょっと尖った奴だ。何が彼をそうさせるのか、最初はよくわからない。ライバルのあんこ型力士大鶴佐助演じる雪乃童はいい奴そうだけど、垢抜けず間抜けな感じが否めない。


本当は野球雑誌を担当したかったのに、相撲なんて興味ない!と駄々こねる雑誌記者の橋谷の視点を借りながら見進めるうちに、どんどん(知らなかっただけで相撲ってめちゃくちゃ面白いのでは…?)という気になってくる。これには自分でも驚いた。というのも、橋谷の行動は今まで興味がなかったジャンルに抵抗しながらもどハマりしていくヲタクそのものなのだ。

そしてパピーズ事務所の女社長、りょう演じる渡部桜子の強烈さ。キャラクターの濃さ、ポップさがとにかく楽しい。そしてそのキャラクターを彩る音楽の豊富さ。桜子のテーマは恐らく"あの曲"のオマージュで、それもすごく面白い。

 

ストーリーのテンポもよく、どんどん場面が移り変わっても違和感がない。これは照明の使い方が上手いなと思った。土俵を表現する時、実際に土俵のセットを使うシーンもあるが、スポットライトの描く円で表現するシーンも多い。土俵一つとっても表現が多彩だ。これはドラマではなかなか味わえない舞台ならではの醍醐味だ。


1幕が終わる頃にはすっかりのめり込んでいた。2幕では、明らかに客席の反応が良くなったのが印象的だった。みんな、久々に浴びた強烈なエンターテイメントに順応できてなかったんだと思う。手拍子や思わず漏れる笑い声、取り組みを見守る空気の一体感。会場のボルテージが上がっているのを感じる。いや〜現場超楽しい。


そして迎えるラストシーン。

 

私は原嘉孝を推している全ての人間が、気が狂いそうなほど羨ましかった。

 

自分の好きな男が、あんな表情で、あんなにもギラギラしたオーラを振りまきながら、あの台詞を言う、そんな幸せがこの世にあるのかと、心底羨ましかった。そして、昇龍のセリフであると分かってはいながらも、どうしても原嘉孝本人と重ねてしまい、そうさせる説得力に痺れた。目がキラキラしている。あまりにもまっすぐで、嘘がないように見える。これが、演劇の神に愛されているということか。

 

見られることで生きていく人間として、あまりにも強いと思った。


昇龍は劇中で何度か橋谷に「お前が美しいと思うものはなんだ?」と問いかける。

昇龍が思う美しさ、そして昇龍が相撲を取る理由、これがあまりにも私の求める美しさの答えで、私がエンターテイメントの中に見たい物は間違いじゃないんだと思った。(だからこそ、昇龍と演じている原嘉孝自身を重ねてしまう)

 


三度の飯のほかにエンターテイメントがないと飢え死ぬ者として、桜子の「私の欲望は全ての女性の欲望を代弁する」「私のプロデュースした男たちが売れるのは、私の欲望が正しいから」というような台詞は最高だった。美しい男が好き。それは時として非難され、バカにされ、だから彼氏ができないとかどうのこうの言われるが、それで良いのだ。


美しい男が好き。デカい太腿とかが好き。綺麗なものが好き。楽しいことが好き。明るい音楽や眩しい照明、知らない人同士がまとまっていく拍手、観るものと見られる者が作る空間。これらは、自分が生きていくために必要なもので、決して不要不急なんかじゃないんだと、くだらない物なんかじゃないんだと確認できた。


空洞だった2020年の締めくくりに、こんな良いものが見れるなんて思ってなかった。


カーテンコールで、晴れ晴れとした表情をしている原嘉孝を見て号泣した。ああ、羨ましい。舞台の上であんな顔を出来ることが羨ましい。そして、そんな素敵な男を予め「好き」という状態でこの舞台を見る人が羨ましい。


「武器は磨いた裸だけ」


主題歌Naked men見ろ、裸の俺たちを!に歌われていることは、役者にも言えることだなと勝手に感じ入った。主題歌マジで良い。なんとびっくりApple Musicにある。‎デーモン閣下の"Naked Men 見ろ、裸の俺たちを!"をApple Musicで「裸の祭り」「裸でおしゃれ」「実れ五穀よ」…2020年一番良い歌間違いなし。(「めろ太郎さんって五穀豊穣とか、ボッティチェリの春みたいな男が好きですよね」と言われて以来、五穀豊穣的ワードに弱い)

 


相撲って、祭りで、神事で、エンターテイメントですげー!日本人のDNAに刻まれし"最高"の概念!万歳!

 


そんな超最高エンターテイメント、両国花錦闘士、なんとまだチケットがあります。気になる人は是非。後悔はさせません。(とは言え、誰もが気軽に観劇出来る世の中でないのが憎い)

 

私は開演即、様子見などという言い訳をしてA席を取ったことを後悔し出来るだけ近くでこの熱と煌めきを浴びたくなったので退場即次入れる日のS席を買いました。もうクセになってやがる。知る前の自分に戻れない。気になった舞台のチケットが買えて、もう一回観たいと思った時に買えることは稀なので幸運。面白かった!と興奮している時の自分がやっぱり一番好きだ。このために生きてきたし、これからもそうやって生きて行くと思う。とにかく、次の観劇が楽しみだ。これで少しはまた人生頑張れる。


というわけで、両国花錦闘士がめちゃくちゃ良かったという話でした。ごっつぁんです。